QIC:1252/B枠でちょこっと紹介したポリティカル・フィクション"DD CRISES"の朝8時18分10秒から約2時間の展開を特別公開。
"DD(Dugout Doug) CRISES"
☆この物語は、1945年8月6日(月)と2015年8月6日(木)とが、日本時間08:18:10から同次元かつ同時刻で進行する。
■1945年8月6日06:30「エノラ・ゲイ」
四国上空。マリアナ諸島テニアン島北飛行場を飛び立った米軍第509混成部隊・第393爆撃戦隊所属B-29長距離通常爆撃機エノラ・ゲイの機内。
ウィリアム・S・パーソンズ海軍大佐(兵器担当兼作戦指揮官)、モーリス・ジェプソン陸軍中尉(兵器担当補佐)、トーマス・フィアビー陸軍少佐(爆撃手)らが爆弾倉に入り、原子爆弾リトルボーイの起爆装置から緑色のプラグ(安全)を抜き、赤色のプラグ(点火)を装填する。
原子爆弾がアクティブになったことを受けてポール・ティベッツ陸軍大佐(機長)がアナウンスする。
「諸君、我々の運んでいる兵器は世界最初の原子爆弾だ」
■1945年8月6日08:15:00「ネセサリー・イーブル」
広島市上空。同部隊所属B-29写真撮影機ネセサリー・イーブルは、僚機エノラ・ゲイの爆弾倉が開く瞬間を撮影。
■1945年8月6日08:15:17「グレート・アーティスト」
広島市上空。同部隊所属B-29観測機グレート・アーティストは、僚機エノラ・ゲイの爆弾倉からリトルボーイが投下されたことを確認しパラシュート付き爆風測定通信機材3個を投下。
同乗していた科学者ルイス・アルバレイス、ローレンス・ジョンストン、ハロルド・アグニューの3人は、測定器から送られてくる信号をモニタしていた。
■1945年8月6日08:15:20「エノラ・ゲイ」
広島市上空。リトルボーイの4トンもの重量を一瞬で失ったリトル・ボーイは、一瞬無重量状態となって3メートル上昇。155度右急旋回して、山陰方向へ急速離脱。
■1945年8月6日08:15:20「グレート・アーティスト」
広島市上空。僚機と同じく155度右急旋回し急速離脱。機内ではハロルド・アグニューが8mmカメラを取り出しゼンマイをまわし始めていた。
■1945年8月6日08:16:00「リトル・ボーイ」
広島市上空約600メートル。直下は相生橋よりやや東南の「島病院」付近。爆発。
■1945年8月6日08:16:05「グレート・アーティスト」
広島市上空から遠ざかりつつ。機内ではハロルド・アグニューが8mmカメラを広島方向に向けシャッターを切ろうとした瞬間。高射砲の直撃を思わせる巨大な衝撃波(原爆の爆発によるもの)が到達し一瞬意識を失う。すぐに意識を取り戻しシャッターを切る「綺麗だ。綺麗なキノコ雲だ‥」
■1945年8月6日08:16:10「ネセサリー・イーブル」
広島市上空から遠ざかりつつ。巨大な衝撃波をものともせずカラーフィルムによる撮影を続行。
■1945年8月6日08:18:00「グレート・アーティスト」
広島市上空からかなり遠ざかりつつ。ハロルド・アグニューは、自分達が行ったことの大きさを感じはじめ、動揺し瞑目した。ふと目を開くと「ん?キノコ雲が‥」ここからは見えないのだな‥と独り納得。
★1945年8月6日08:18:10「ネセサリー・イーブル」
広島市上空からかなり遠ざかりつつ。カラーフィルムによる撮影を続行していたが、不意にキノコ雲が視界から消える。だがその意味を理解する者は誰もいなかった。
★2015年8月6日08:18:10「広島」
広島中央警察署・十日市交番。台風8号が四国付近の太平洋上を通過しつつあり、広島市内は時折強く雨が降っていた。
交番勤務の沼田孝一巡査(26才)は、蒸し暑い空気を吸い込みつつ、寺町通りを走る広電(路面電車)の姿を眺めていた。近所の商店主因幡彰夫が通りかかる「ようけ降りますな。甲子園も中止やそうですな」
その刹那、横川方向に向かって走行する広電900形電車に強烈な夏の日差しがフラッシュした。
空を見上げる沼田巡査の目に飛び込んだものは、真っ青な夏空だった。「晴れ‥ましたな」
★2015年8月6日08:18:10「広島平和記念公園」
広島平和記念式典。NHKが08:35まで生放送。民放各局がワイドショー枠で部分的に生中継を入れる。土砂降りの雨が一瞬で夏空に変わり場内にどよめきが起こる。中には感極まって泣き出す人もいる。
第45代アメリカ大統領ビル・ジェファーソンが、史上初めて参列するということで厳戒態勢である。08:15からの黙祷を終えて、大統領と内閣総理大臣竹林尚樹が専用車で退場。そのまま広島西空港に向かう。※不測の事態を考慮して、とんぼ返りが予め計画ならびに告知されていた。
■2015年8月6日08:18:10「米空軍嘉手納基地」
嘉手納基地。アメリカ空軍第390情報隊所属のデイヴィッド・ヒル中尉は基地内のベンチに腰を下ろし、郷里イリノイ州ペオリアから届いた母親からの手紙に目を通していた。その時、耳慣れないレシプロエンジンの音に気付き、右斜め上空を見上げた。「逆ガル?」ふと見上げるとそれは6機編隊で飛行するF4U- 1Dコルセア(アメリカ海軍タイコンデロガ級航空母艦の3番艦USSハンコック・CV-19の艦載機。アメリカ海軍第6戦闘爆撃飛行隊所属機)であった。
「太平洋戦争のメモリアルイベントかな?」そう思った直後、コルセア1機から1000ポンド爆弾が投下された。
■1945年8月6日08:18:10「F4U-1Dコルセア」
22歳のグレン海軍中尉はこれまでの戦闘で身も心も疲弊しきっていた。やっと終わった沖縄戦。一部の残存日本軍を掃討するための出撃。突如出現した嘉手納基地を目撃し大きな衝撃をうける。「日本軍が蘇っている」震える指で彼は爆弾投下レバーを引いた。
■2015年8月6日08:18:10「KDDI山口衛星通信センター」
山口県山口市。固定衛星通信(インテルサット)、移動衛星通信(インマルサット)の回線が全て途絶。衛星の信号がキャッチできない。
■2015年8月6日08:18:10「NHK放送センター国際局」
アメリカABCから伝送されるニュースを受信していたが途絶。「KDDIの故障か?」
■2015年8月6日08:18:10「対馬」
航空自衛隊海栗島分屯基地。西部航空方面隊・西部航空警戒管制団・第19警戒隊。朝鮮半島の航空識別情報、そのほか電波情報が一瞬にして消えた。
■2015年8月6日08:18:20「米空軍嘉手納基地」
コルセア1機から投下された1000ポンド爆弾は、訓練飛行準備のため屋外で整列していた第18航空団第67戦闘飛行隊所属のF-15イーグルを直撃。7機大破炎上。3機中破横転。整備兵ら12名即死、21名重軽傷。愕然とするデイヴィッド・ヒル中尉「テロなのか」‥。
■2015年8月6日08:18:20「福岡県春日市」
航空自衛隊春日基地。西部航空警戒管制団司令部。第19警戒隊からの異常情報を受け、俄かに緊張感が高まる。
■1945年8月6日08:18:25「F4U-1Dコルセア」
編隊を指揮するロイ海軍大尉がグレン中尉を無線で叱責する。「それにしてもこの光景は‥映画のセットじゃあるまいし」
■2015年8月6日08:18:40「KDDI小山ビリングサポートセンター」
国際電話、国際通信、海外サーバを介したインターネット、イリジウムの顧客からの問合せが殺到し始める。2分後には輻輳状態へ。
■2015年8月6日08:18:40「三宅島沖」
太平洋。三宅島の北東30キロの海域を通常潜水航行していた海上自衛隊潜水艦そうりゅう(第1潜水隊群第5潜水隊)。ソナー手「大艦隊クラスの反応あり」
那須良蔵艦長(1佐)「潜水艦隊司令部宛、熊野灘沖合いにて俄かに国籍不明の艦影多数、ワレ埋伏ス」
■2015年8月6日08:18:40「NHK視聴者コールセンター」
衛星放送系の全チャンネルが停波。折りしも、日本人大リーガー谷山亮(ニューヨークヤンキース)の復帰後初打席の生中継中であったため、抗議と問合せの電話が殺到。まもなく輻輳状態へ。
■1945年8月6日08:18:40「潮岬沖」
太平洋。三宅島沖北東90キロの海域。アメリカ第3艦隊第34任務部隊第1群(オスカー・C・バッジャー少将)旗艦アイオワ、戦艦ミズーリ、ウィスコンシン、ノース・カロライナ、アラバマ、インディアナ、サウスダコタ、軽巡洋艦アトランタ、デイトン、駆逐艦8隻とイギリス戦艦キング・ジョージ5世、駆逐艦クォリティー、キーベローンほか。
第38任務部隊所属の空母ヨークタウン、ベニントン、シャングリラ、インディペンデンス、ベロー・ウッド、カウペンス、ラングレイ、サン・ジャシントほか。
■2015年8月6日08:20:00「防衛省情報本部」
分析部員・河原和夫二等陸佐が在日アメリカ空軍からの緊急情報を受信。嘉手納が空襲されたことを知る。直ちに本部長大田正行空将(防大25期・前統合幕僚学校長)に報告。
■2015年8月6日08:20:00「NTT東日本」
首都圏の一般電話回線がほぼ輻輳状態にあると判断。災害時対策基本計画に基づいた通話規制を決定。直ちに実施。
※その他、首都圏の携帯電話回線も順次輻輳状態に。各社通話規制を決定。直ちに実施。
■1945年8月6日08:20:30「釜石沖」
釜石沖10キロを潜航走行中の米海軍潜水艦「アトゥル」「アーチャーフィッシュ」「ガトー」‥。アトュル艦長ジョン・H・マウラー中佐が潜望鏡で釜石市を遠望する。近代的建築物が立ち並ぶ姿に目を疑う。「これが砲撃された町なのか?」※1945年7月14日釜石は本州初の艦砲射撃を受け2565発もの砲弾が打ち込まれている。製鉄所を中心に砲弾が集中し周辺の鈴子・只越・嬉石・松原地区等が大きな被害を受けた。
■2015年8月6日08:22:00「防衛省情報本部」
大田正行空将から地元選挙区(秋田)に帰省していた宮元信二郎防衛大臣に連絡。宮元大臣が機転を利かせて大田空将から直接総理官邸に通報するよう命じ、自分は航空自衛隊秋田分屯基地(秋田空港)から救難捜索機U-125Aで直ちに帰京すると伝える。
■2015年8月6日08:22:00「広島西空港」
ジェファーソン大統領と竹林総理の専用車到着。直ちに政府専用ヘリ3機EC-225LP(陸上自衛隊第1ヘリコプター団・特別輸送ヘリコプター隊)に分譲。直ちに離陸。三原市の広島空港へ。※警備上、岩国基地に向かう選択肢が有利であるが、竹林総理を誕生させたキングメーカー栃塚党最高顧問(三原市出身)の顔を立てて、アクセス等で評判の悪い広島空港のイメージアップを狙った。結果的に後々危険を回避できたことになる。
■2015年8月6日08:22:30「瀬戸内海・安芸灘・前島沖」
山口県・屋代島の北6キロに浮かぶ前島から北北西3キロの洋上で操業していた刺網漁船・第18大幸丸ほか数隻が、突如飛来した単機のP51ムスタングから銃撃さる。第18大幸丸ほか2隻沈没。5名死亡、8名重軽傷。第15日幸丸船長・岩田翔太が携帯電話(無線機が破壊されたため)で118通報。「プロペラの米軍機に銃撃された!」
■2015年8月6日08:23:00「総理大臣官邸5階総理執務室→政府ヘリ」
政府ヘリで移動中の内閣総理大臣竹林尚樹に対し、事務担当秘書官友枝三郎(経済産業省から出向)が「大規模な通信トラブルが発生」との一報。
続いて事務担当秘書官村田允(外務省から出向)が、訪米中の杉村寛司外務大臣との連絡が途絶したことを報告。
立て続けて大田正行空将から総理官邸に緊急連絡。嘉手納基地爆撃と防衛大臣緊急帰京の件を通報。
護衛の戦闘機を空自に命令。
■2015年8月6日08:23:20「総理大臣官邸地階・内閣危機管理センター」
内閣情報集約センター常勤スタッフが多角的に情報を収集。東京都新宿区市谷本村町の内閣衛星情報センターから「レーダ4号機、光学5号機全てブラックアウト」
内閣危機管理監・定岡継道(元警視総監)に緊急連絡。「すぐお越し下さい。重大インシデント発生。現在はフェーズ1ではありますが、一気にフェーズ3のクライシスに発展する可能性が高い」
■2015年8月6日08:23:50「第6管区海上保安本部」
118通報を受けて広島市南区の第6管区海上保安本部に緊張が走る。
直ちに岩国海上保安署に指令、巡視艇くにかぜ・巡視艇ことびき(兼消防艇)を現場に出動させる。
広島航空基地からヘリコプターあび2号(ベル206B型JA6178)を発信。
管区本部長・伊藤清太郎(一等海上保安監・甲)から長官宛緊急連絡「米軍機らしき国籍不明の軍用機による銃撃事件。テロの可能性あり」
山口県警にも連絡。
■2015年8月6日08:25:30「海上保安庁長官室」
登庁した六車冬彦長官(前国土交通省航空局長)が長官室に入るや否や、斉藤健之警備救難監が飛び込んでくる。「航空機使用テロ発生。総理官邸、防衛庁、在日米軍に緊急連絡の必要あり」‥。六車長官は、自分が国土交通省の若手官僚の時(1999年)に発生した航空機使用テロ事件を思い出し、直ちに各部局への緊急連絡と、非常警備体制を敷くことを指示。
■2015年8月6日08:25:30「沖縄・中城港沖20km」
定期パトロールで中城湾の沖合を航行中の巡視船くだかから通報。航空母艦数隻を含む国籍不明艦隊を中城湾にて視認。これは訓練か?
■2015年8月6日08:25:40「山口県警本部司令室」
第6管区海上保安本部からの連絡を受けて、山口宇部空港から県警ヘリ「あきよし」が出動。
■2015年8月6日08:26:50「国土交通省」
海保などから逐一送られてくる緊急情報に庁舎全体がパニックになりつつある。
また、那覇航空交通管制部、福岡航空交通管制部、東京航空交通管制部、札幌航空交通管制部(国土交通省航空局管轄下全ての航空交通管制部)から国籍不明の小型機・中型機・大型機が数百機の単位で無許可飛行をしている。複数の国際線旅客機が太平洋上などで消息を絶った‥などの衝撃的な報告が入る。
航空局長、海事局長、港湾局長、鉄道局長ら高級官僚が大臣執務室につめかけ騒然。松岡晴美国土交通大臣は自分の理解を超えた状況にイラ立ちを隠し切れずにいた。
■2015年8月6日08:27:30「空自築城基地」
総理、大統領警護のため戦闘機F-15DJが3機(第8航空団・第304飛行隊所属)が離陸。
■2015年8月6日08:27:50「九州総合通信局電波監理部監視課」
熊本市。9分ほど前から突然増え出した短波帯の英語による通信。部内が緊張し始める。
■2015年8月6日08:27:50「岩国基地」
前島沖で襲撃したP51ムスタングが移動して岩国基地上空に飛来。米海兵隊の施設を射撃。重軽傷者4名を出す。P-51が低速で反転したした際に海兵隊員コナーズ大尉が独断でFIM-92Fスティンガーミサイル(携行式地対空ミサイル)を発射し撃墜する。
■2015年8月6日08:27:50「海自岩国基地」
前島沖銃撃事件の情報を独自入手していたところへ実物のP51ムスタングが米海兵隊の施設を射撃。司令の独断で救難機US-2を1機救援出動させる。
■2015年8月6日08:27:50「航空自衛隊与座岳分屯基地」
沖縄本島の南西端糸満市。第56警戒群の監視管制隊が最新鋭のJ/FPS-5レーダー(通称ガメラレーダー)で監視している。突然現れた多数の航空目標に戸惑い続ける牧太郎一尉。そこへ中山一曹が飛び込んでくる「真上をグラマンの編隊が飛んでいます」
■2015年8月6日08:27:50「航空自衛隊那覇基地」
与座岳分屯基地からのリアルタイム情報に震撼する航空隊司令(兼那覇基地司令)富岡信惟空将補。上級部署に逐一報告を入れつつ、独自の判断で第204飛行隊のF-15J/DJに空域警戒行動を指令する。
■2015年8月6日08:28:00「気象庁気象衛星通信所」
埼玉県比企郡鳩山町の気象衛星通信所では、運輸多目的衛星ひまわり8号からの通信が途絶してお手上げの状態。予備機のひまわり6号7号も同様であった。
だが各気象台から寄せられる観測データからは、台風の存在を思わせるものは何一つ無くなっていた。
■2015年8月6日08:28:00「陸上幕僚監部」
陸上自衛隊各駐屯地及び基地等に対し、陸幕長から対空警戒を指令。各基地隊空砲などスタンバイ。
■2015年8月6日08:28:00「空自三沢基地」
早期警戒機E-2Cが2機(警戒航空隊・飛行警戒監視隊所属)が離陸。
■2015年8月6日08:28:00「空自浜松基地」
早期警戒管制機E-767が1機(警戒航空隊・飛行警戒管制隊所属)が離陸。
■2015年8月6日08:28:00「空自築城基地」
前年に改修を終えて航続距離を3000kmに延長した戦闘機F-2が2機(第8航空団・第6飛行隊所属)が離陸。エレメンタル・リーダー富川学一尉(30)
■2015年8月6日08:28:00「海自那覇航空基地」
最新鋭の早期警戒機P-4A(第5航空群・第5航空隊所属)が離陸。
■2015年8月6日08:28:00「海自鹿屋航空基地」
最新鋭の早期警戒機P-4A(第1航空群・第1航空隊所属)が離陸。
■2015年8月6日08:28:00「海自厚木航空基地」
早期警戒機P-3C(第4航空群・第3航空隊所属)が離陸。
■2015年8月6日08:28:00「海自八戸航空基地」
最新鋭の早期警戒機P-4A(第2航空群・第2航空隊所属)が離陸。
■2015年8月6日08:28:00「福岡市南区大橋」
国道385号線から若久団地に向かっていた空調メンテナンス会社三和空調の作業員隈部。ふと見たカーナビに異変を感じる。「おや?GPS受信しとらんやん」
※全国でGPS測量を行っていた測量作業員、国土地理院のGEONET(GPS連続観測システム)の担当者も戸惑わせていた。
■2015年8月6日08:28:30「鹿児島桜島」
半月前から活発な活動を続けている桜島。昭和火口付近より比較的規模の大きい水蒸気爆発。噴煙は4000m以上上昇。火砕流が火口から東側に約1km流れたほか、大きな噴石が火口から800―1300m離れた4合目まで達した。
■2015年8月6日08:28:30「米海軍厚木飛行場」
早期警戒機E-2C(第5空母航空団・第115早期警戒飛行隊)が離陸。基地内に緊急警備体制。
■2015年8月6日08:28:30「米空軍嘉手納基地」
依然混乱状態が続いているが、滑走路自体は無事。第18航空団所属の2機(エレメント)のF-15、1機のE-3Bが離陸。基地内に緊急警備体制。
■2015年8月6日08:28:30「米海兵隊岩国基地」
米海兵隊、戦闘攻撃機F/A-18D(第1海兵航空団・第12海兵航空群所属)出撃準備完了。基地内に緊急警備体制。
■2015年8月6日08:28:30「米海兵隊普天間基地」
基地内に緊急警備体制。
■2015年8月6日08:28:50「岩国港」
岩国署からは刑事や鑑識員が出動。警備艇がなく、港に停泊していた俊足プレジャーボートのオーナーに頼み込んで出航。
■2015年8月6日08:29:00「駐日アメリカ大使館」
本国との連絡が完全に途絶していることに苛立つ特命全権大使ジェームス・ワトキンス。武官マイケル・ランキン海軍中佐「これは回線トラブルなんてものではありませんな」
せめてもの救いは、大統領とのコンタクトがとれていることだ。
■2015年8月6日08:29:30「警察庁警備局警備課」
警備局警備課長・向谷渉(警視長)が出勤。未整理の情報が飛び交い混乱している庁内に驚く。
■2015年8月6日08:29:00「駐日アメリカ大使館武官室」
武官マイケル・ランキン海軍中佐の元へ緊急メールが届く。嘉手納基地と岩国基地での事件を知る。「F-4U?、P-51?‥狂ってる」
■2015年8月6日08:31:00「山陰上空」
福岡空港を定刻7:55に離陸したANA316便(福岡→小松、B737−500型機、126・133席、AIR NEXT株式会社が運行)が岩国上空を飛行中。前方から接近する3機のB-29とニアミス。
■2015年8月6日08:32:00「岩国基地」
命令無しに何故撃墜したと叱責するロメロ中佐に「正当防衛です。当然でしょ」と涼しい顔のコナーズ大尉。
撃墜したP51ムスタングは、極めて低速かつ高度が低かったこと、火災が発生しなかったこと、そして破壊部位が尾翼付近であったことが幸いして奇跡的にパイロットは打撲・骨折程度で救出(意識あり)された。
パイロット「俺は陸軍第5航空団のロジャー中尉だ。君達はどこの人間だ?」
機体を検証しているスタッフ「本物のP-51Dです。1944年製。なのに殆ど新品です」
■2015年8月6日08:33:00「フジテレビ報道センター」
電話のベルや怒号が交差する騒然とした状態。冨永報道局長を囲むように社会部長、政治部長、経済部長、外信部長らが集合、その周りに2重3重の輪ができている。
報道局長「よくわからん事態だ。国際通信は全滅。衛星も全滅。その上、謎の米軍機だ。しかし未曾有の大事件が進行していることは間違いない。これから報道特番体制をとる」
まずテロップによる速報「海外向け通信回線が全面的に途絶状態」
■2015年8月6日08:33:30「NHKニュースセンター」
テロップ速報出す。
■2015年8月6日08:33:50「日テレ報道センター」
テロップ速報出す。
■2015年8月6日08:34:00「広島空港」
ジェファーソン大統領と竹林総理の政府専用ヘリEC-225LP(陸上自衛隊第1ヘリコプター団・特別輸送ヘリコプター隊)が到着。予定されていた挨拶等のスケジュールを全てキャンセル。直ちに政府専用機(航空自衛隊・航空支援集団・特別航空輸送隊所属)に移乗。離陸。機内にも日本政府からの情報がリアルタイムで伝送されている。竹林総理「大統領と話をしておいたほうが良さそうだ」緊急首脳会談を打診。
■2015年8月6日08:34:20「瀬戸内海・安芸灘・前島沖」
岩国基地から飛来した海自救難機US-2が現場に到着。直ちに要救助者を収容開始。海保にも連絡。
■2015年8月6日08:35:00「琉球放送チャーター取材ヘリ」
08:30に那覇空港を飛び立った琉球放送報道部がチャーターしたヘリ。07:00過ぎに海中道路で発生した多重事故の現場空撮のため中城(なかぐすく)湾岸を飛行中。
山本カメラマン「なんじゃろ、あの船ずげえ。空母もおるんじゃない?」すぐにカメラを艦隊に向け無線連絡。
■2015年8月6日08:36:00「琉球放送報道部」
取材ヘリからのライブ映像を凝視する比嘉報道部長「これ、見たことがある。‥沖縄戦の記録フィルムだ」「TBS、TBS呼び出して」
■2015年8月6日08:37:00「テレビ朝日報道センター」
報道特別番組と題して通信途絶問題を速報で流しはじめる。
■2015年8月6日08:37:10「NHKニュースセンター」
国交省担当記者から一報。「瀬戸内海で漁船が所属不明の米軍機に銃撃され死傷者が出ている模様」
■2015年8月6日08:38:50「国土交通省」
航空局長が緊急会見。「衛星通信回線の途絶等の混乱状態が解決するまでの間。日本国内全ての空港を一時閉鎖する。現在飛行中の民間航空機は最寄の空港に降りていただく」テレビ各局が生中継。
■2015年8月6日08:38:50「羽田空港第一ターミナルビル」
テレビで会見を見た人々から困惑の声があがる。折りしも帰省ラッシュ真っ只中。各航空会社の窓口担当者は、これから押し寄せる津波のようなクレームに憂鬱になっていた。
「台風が消えたと思ったらこれだ」
この時、テレビ(NHK)がテロップで瀬戸内海銃撃事件の速報を流した。
■2015年8月6日08:39:30「フジテレビ報道センター」
NHKが第一報を報じた瀬戸内海銃撃事件に各報道部員は電話にかかりっきりになっていた。山口県に加盟局を持たないFNNの弱点を突かれた形。だが冨永報道局長はひるまなかった。TSSテレビ新広島と緊密な連絡をとり、取材ヘリを急行させる。
「TBSがなんか抜いてるぞ!」
集中モニタのTBSが中城湾沖の大艦隊をライブで映し出している。
「なんだこりゃ」
■2015年8月6日08:40:10「総理大臣官邸地階危機管理センター」
パトカーで内閣危機管理監定岡継道(元警視総監)が到着。直ちに地階危機管理センターへ。内閣情報集約センター常勤スタッフからブリーフィングを受ける。「マスコミ対策はぬかりなく」これはフェーズ3だよ。「フェーズ3を発令して宜しいでしょうか」「本来は大地震を想定したクライシスマネジメントではあるが、宜しいフェーズ3だ。全省庁との連携を密にするように」
■2015年8月6日08:41:00「琉球放送チャーター取材ヘリ」
いま撮影している映像が日本全体を震撼させていることなど知らない山本カメラマン。冷静に大艦隊を捉える。パイロットの大宮智紀が叫ぶ。「10時の方向。2機接近してます!」
山本がレンズを振る。「これは、F6F‥ヘルキャットじゃないか!」
■2015年8月6日08:41:30「TBS・Nスタジオ」
琉球放送からのライブ映像をスタジオモニタで凝視する武藤景子アナウンサー(若手)が問いかける。「山本さん。接近してきているようですが、距離はどれくらいですか?」
■2015年8月6日08:41:40「琉球放送チャーター取材ヘリ」
山本「2キロ無いと思います。かなり接近しています。」
■2015年8月6日08:41:50「TBS・Nスタジオ」
武藤アナ「もし危険を感じたらその場から離れてください」
■2015年8月6日08:42:00「フジテレビ報道センター」
他局の映像だが、この場に居る多くの者がTBSのモニタを凝視していた。接近するF6Fの両翼からモヤモヤとした薄い煙が上がる。誰かが叫ぶ「撃ってるぞ!」
■2015年8月6日08:42:10「瀬戸内海・安芸灘・前島沖」
岩国港から高速プレジャーボートで岩国署の面々が現場に到着。直ちに現場検証。「これって俺達の事件になるか?」
■2015年8月6日08:42:30「竹島付近」
築城基地より飛来したF-2戦闘機2機(第8航空団・第6飛行隊所属)。エレメンタル・リーダー富川一尉「竹島。韓国警備隊健在。普段なら韓国機がスクランブルかけてくるエリアまで踏み込んでいるが、その気配なし」
■2015年8月6日08:42:40「琉球放送チャーター取材ヘリ」
山本の思考は完全に停止していた。大宮が振り返ると、頭部が離脱した山本が死んでいた。大宮が外の景色に意識を移したとき、それはメリーゴーラウンドのように回転していた。
5秒後大宮の意識も永遠に停止した。
■2015年8月6日08:43:00「フジテレビ報道センター」
冨永報道局長が叫ぶ「全番組ぶちぬくぞ!今日は帰れんから覚悟しといてくれ。」
■2015年8月6日08:44:00「2ちゃんねる実況板」
海外データセンターを利用している全ての大型掲示板がアクセス途絶。一部の国内サーバ型掲示板やSNSにアクセスが集中し始めていた。祭と云うよりむしろパニック。軍事オタクがF6Fには12.7mm弾を使用するM2機関銃が6丁あることを力説し、またある者は「自衛隊は何やってるんだ」と怒った。
■2015年8月6日08:44:10「鬱陵島付近」
築城基地より飛来したF-2戦闘機2機(第8航空団・第6飛行隊所属)。エレメンタル・リーダー富川一尉「韓国側防空体制沈黙。これより韓国領空侵入を試みる」
築城基地指令「責任はこちらが引き受ける。但し無茶はするな」
■2015年8月6日08:44:15「TBS・Nスタジオ」
ショックで涙が止まらずまともに声が出ていない武藤アナに代わり、急遽ベテランの門口幸太郎アナが席に着いた。
「ご覧頂きましたように、太平洋戦争時に使用されていたものと同じタイプと思われる戦闘機がJNNの取材ヘリを銃撃した模様です。安否につきましては、情報が入り次第お伝えします」
■2015年8月6日08:44:30「在日米軍司令部」
横田基地。ここにも多数の情報が入っているが、どれも耳を疑いたくなるものばかりであった。しかも上級司令部である太平洋軍司令部との連絡が途絶し、本来調整役でしかない在日米軍司令部が何をすべきか判断するに至っていない。
■2015年8月6日08:46:00「共同統合作戦調整センター」
横田基地。米空軍第5・第13航空軍司令部と航空自衛隊航空総隊司令部から其々調整役の上級将校が顔を合わせていた。
ハロルド・チャンドラー大佐「信じられない話だが、日本が1945年にタイムスリップしているようだ」普段アメリカンジョークをよく飛ばすハロルド大佐ではあったが、顔面蒼白である。
鈴木敦夫一佐「少なくとも太平洋周辺海域における状況は完全に1945年8月6日。史実通りの配置だ」
ハロルド・チャンドラー大佐「判断を下すには余りに情報が乏しい。米軍としては、現時点では正当な防衛活動つまりわが身を守ることしかできない」
鈴木敦夫一佐「つまり日本は自分で守れということだな」
ハロルド・チャンドラー大佐「今はそれしかいえない」
■2015年8月6日08:47:30「総理大臣官邸地階危機管理センター」
内閣総理大臣竹林尚樹を内閣危機管理監定岡継道(元警視総監)が補佐していた。
・訪米中で連絡が途絶している杉村寛司外務大臣の代行として吉田久雄外務副大臣を指名。
・臨時閣議の招集。
・全国会議員の所在確認。
・全自治体の所在確認と異変情報の収集。(総務大臣)
・全交通網の現状に関する情報収集。(国土交通省)
・海上保安庁の全ての部署の現状報告。(海上保安庁)※瀬戸内事件はまだ正確な情報が入らない。
・陸海空自衛隊の全ての部署の現状報告。(防衛省)
・備蓄エネルギーの状況。(資源エネルギー庁)
・アメリカ大使を呼び、情報の共有化を図る。
・在日米軍と自衛隊の情報共有。
・国民の生命財産の保護。
・沖縄県民に対して外出自粛を勧告。
・他の全国民に対しても極力外出を取りやめるよう要請。
竹林首相「まさかSF小説じゃあるまいし、しかし、タイムスリップなんてことがあるわけがない」
定岡危機管理監「normalcy biasってご存知ですか?総理。正常化の偏見と訳しますが‥。」
■2015年8月6日08:52:20「瀬戸内海・安芸灘・前島沖」
広島航空基地から飛来した海保ヘリコプターあび2号(ベル206B型JA6178)が現場上空に到着。山口県警が現状検証中であることと既に要救助者がいないことを確認して上空警戒。
■2015年8月6日08:53:00「瀬戸内海・安芸灘・前島沖」
山口宇部空港から飛来した山口県警ヘリあきよし(ベル206L-V)が現場上空に到着。海保ヘリコプターあび2号と上空警戒。
■2015年8月6日08:53:10「韓国釜山市上空」
築城基地より飛来したF-2戦闘機2機(第8航空団・第6飛行隊所属)。エレメンタル・リーダー富川一尉「これは何だ。蔚山から釜山にかけて偵察中。近代的なビルが確認できない。砲台がある。日章旗確認。」
■2015年8月6日08:54:30「フジテレビ報道センター」
丸野茂アナウンサー。ここで新たな情報が入ってきました。山口県内、瀬戸内海の前島の沖合いで操業していた刺網漁船・第18大幸丸ほか数隻が、飛来した太平洋戦争時代の米軍のものと思われる戦闘機1機から銃撃を受け、第18大幸丸ほか2隻が沈没。乗組員ら5名の方が死亡、8名重軽傷という情報が入ってきました。えー、続いて新たな情報です。銃撃したのはアメリカの戦闘機P-51で、アメリカ海兵隊岩国基地に於いて撃墜されたという情報です。繰り返してお伝えいたします‥。
■2015年8月6日08:56:20「山口県警本部」
県警本部長石川孝道警視監と中国管区警察局・局長原田雅憲警視監が電話で相談中。
「戦闘機のパイロット‥そうです。アメリカ兵なんですが、1945年から来たと‥。検挙できる話かどうか?」
「高度な政治判断が求められる事案になるでしょう」
■2015年8月6日08:59:50「総理大臣官邸1階記者会見室」
内閣官房長官森本啓造が緊急記者会見を行う。国民に対する外出の自粛、メディアを通じて正確な情報を入手することへの呼び掛け。
産経新聞松野記者から「瀬戸内事件」について質問。官房長官「情報が錯綜している」と逃げ。
■2015年8月6日09:00:00「東京証券取引所」
普段なら前場が9時にスタートするのだが、通信途絶を受けて異例の全銘柄取引停止措置。「大阪証券取引所」「名古屋証券取引所」が追従。
■2015年8月6日09:02:20「平磯太陽観測センター」
茨城県ひたちなか市。情報通信研究機構・平磯太陽観測センター。冬月誠センター長と山下研究員がデータを照合し、一つの結論に至る。
総務省および各マスコミへの発表を決める。
■2015年8月6日09:06:50「総理大臣官邸4階閣僚応接室」
記者会見を終えた森本内閣官房長官。そこへ国交省からやってきた松岡晴美国土交通大臣に詰め寄る。「瀬戸内での銃撃事件について情報が上がってきませんが」「道路、鉄道、航空、船舶、国土の全部を1つの省でやってるんです。・・・申し訳ありません」
やりとりを見ていた宮原隆一郎財務大臣(副総理)「はるちゃん。場合によっては海保を自衛隊の指揮下におくことも在り得るよ。竹林総理が決めることだけど、いいね。」
※自衛隊法第80条により、有事の際防衛出動や内閣総理大臣の命令による治安出動において特に必要な場合には、内閣総理大臣の命令により防衛大臣の指揮下に組み入れられる可能性がある。これは海上保安庁の設立モデルとなった米沿岸警備隊が戦時には米海軍の指揮下に入り「軍隊」として運用される規定に倣ったものである。
■2015年8月6日09:06:50「瀬戸内海・安芸灘・前島沖」
マスコミ各社の取材ヘリが続々飛来。騒然とし始める。
■2015年8月6日09:06:50「総理大臣官邸地階危機管理センター→政府専用機」
定岡内閣危機管理監が専用機内の総理に極秘電話。瀬戸内での死者5、重軽傷8で間違いありません。「岩国での撃墜は?」事実です。パイロットは生存。アメリカ陸軍第5航空団所属のロジャー中尉。年齢は24歳。尚、1921年生まれ‥だそうです。「1921年?大正10年ってことか?」
■2015年8月6日09:08:30「フジテレビ報道センター」
丸野茂アナウンサー。ここでテレビ新広島から中継でお伝えします。画面は、インタビューに答える第15日幸丸船長・岩田翔太。「突然だったんで。ラジコンにしちゃデカいし。突然撃ってきて‥(泣)」
■2015年8月6日09:08:30「防災科学技術研究所」
茨城県つくば市。高感度地震観測網Hi-netがスマトラ沖と思われるM8.2の巨大地震をキャッチする。※海外との通信が途絶しているので震源は推定位置。
■2015年8月6日09:08:45「気象庁」
スマトラ沖M8.2を受けて津波判定作業。※海外との通信が途絶しているので震源は推定位置。精度が劣る。
■2015年8月6日09:10:15「NHKニュースセンター」
気象庁からリアルタイムで送られてくる地震情報がモニタ画面に表示される。ニュースデスク「おいおい今度は大地震かよ。津波だと画面構成考えにゃならんなぁ」
■2015年8月6日09:11:00「岩国基地」
応急治療を終えたロジャー中尉に缶コーラを勧めながらロメロ中佐が尋問する。何処から来た?「オキナワ」生まれは?「クリーブランド、オハイオ」「あなたはアメリカ人なのか?此処は何ですか?」アメリカ海兵隊だ。2015年の‥。缶コーラを見つめるロジャー中尉。「これはコーラなんですか?」
■2015年8月6日09:11:30「気象庁」
太平洋岸の沿岸部に津波警報。それ以外の全ての沿岸に津波注意報を発令。
■2015年8月6日09:11:30「テレビ朝日報道センター」
来たぞ津波警報!太平洋側の全ネット局さん総動員!
■2015年8月6日09:11:30「フジテレビ報道センター」
来たぞ津波警報!「スマトラだと第一波の日本到達は4〜5時間後だぞ」
■2015年8月6日09:12:15「総理大臣官邸地階危機管理センター→政府専用機」
竹林総理は政府専用機から。
地元秋田から自衛隊機で上京中の宮元信二郎防衛相が機内から緊急無線通信(衛星回線ではないので若干不安定)で参加。
杉村外相の代行に指名された吉田久雄外務副大臣が参加。
それ以外の閣僚は全員集まった。
・森本官房長官から外遊中の衆参議員12名が消息不明であることの報告。
・総務相から全自治体の消息を確認したこと。太平洋、四国、九州、沖縄の沿岸及び離島に於いて、太平洋戦争当時の軍用機の目撃情報多数。一部に攻撃された例もある。
・吉田外相代行から、全ての外国公館との連絡が途絶している。
・再び総務相が、JAXA(宇宙航空研究開発機構)などから全ての衛星がブラックアウト状態つまり見失った。もしくは消失した。この他、KDDIなどからの報告で海底ケーブルも切断された状態。
総理「つまり、わが国は孤立しているということか?」
総務相「そういうことです」
国土交通相「国内の鉄道、道路は概ね順調に機能しております。航空関係は全てストップ。海運も欠航が続出しておりまして、帰省ラッシュ真っ只中のこの状況。帰宅難民対策を指示しました」
村田了作文科相「夏休みで生徒児童の状況把握が困難。それとJAXAなんですが‥まもなくH2Cロケットの打ち上げが予定されております」
総理「何時ですか?」
文科相「本来は午前2時過ぎの予定だったのですが、台風の通過待ちで8時間遅れとなりまして、まもなく午前10時打ち上げ予定です」
国土交通相「うちの多目的衛星ひまわり9号が搭載されております。これは通信衛星としても活用できます。1年前倒しで投入です。」
文科相「うちの陸域観測技術衛星2号も搭載しております。これが機能すれば全地球の現状がつかめます。」
三ヶ尻守経産相「資源エネルギー庁およびJOGMEC石油天然ガス・金属鉱物資源機構からの報告ですが、原油備蓄量は現在215日分。つまり今と同じ使い方をすれば215日しか持ちません」
総理「備蓄基地は死守しなきゃならんな」
防衛相「全自衛隊は健在です。また全ての情報を総合すると、我が国は1945年当時の連合軍によって包囲されている状況です。在日米軍が連合軍に対する無線でのコンタクトには一切反応がありません」
轟官房副長官が入室し、西岡総務相にメモを渡す。「中座させて頂きます。」
■2015年8月6日09:12:30「日本テレビ那覇支局」
琉球新報旧本社ビル(琉球新報社泉崎ビル)の4階に入居している日本テレビ那覇支局。
※ちなみに同階には読売新聞社那覇支局、毎日新聞社那覇支局、日本経済新聞社那覇支局、産経新聞社那覇支局、西日本新聞社那覇支局などが入居している。
NNN系列局が無い沖縄の取材拠点。支局長3年目の榊原聡史が陣頭指揮を執る。沖縄市のショッピングモール「コリンザ」の屋上展望施設mirubaに定点カメラを緊急配置。平良レポーターが生中継。「やまなか通り、沖縄自動車道を挟んだすぐ向こう側は嘉手納基地です。ご覧下さい。依然F-15と思われる残骸が大きく炎上しています。」
■2015年8月6日09:13:30「CNN東京支局」
東京都港区虎ノ門3丁目。NNNが伝えるF-15炎上の映像をモニタしながらショーン・ホイス東京支局長が呟く。「この画をアトランタに送れたら‥世界が震える映像なのに。残念だ。」
■2015年8月6日09:14:50「平磯太陽観測センター→西岡総務相」
茨城県ひたちなか市。情報通信研究機構・平磯太陽観測センター。冬月誠センター長とつながった電話に西岡総務相が出る。「事務方から概要を聞きましたが、冬月先生。間違いないのですね。」※西岡総務相は京都大学理学部で宇宙物理を専攻した異色議員(ちなみに2世議員)。宇宙議員連盟座長でもある。
冬月が語る。「太陽の自転周期は25.38日、一瞬で黒点の位置が大きくズレるということはありえません。しかし、それが起きてしまったのです。照合した結果。現在の黒点の位置は1945年8月6日です」
電話を切り、脇で見守っていた岸本弥生総務大臣政務官に声をかける。「岸本君。今年は何年だっけ」「大臣。2015年ですが」「残念、はずれ。1945年らしいぞ」
■2015年8月6日09:15:30「慶応大学矢上キャンパス22棟」
神奈川県横浜市。慶応大学理工学部物理学科。宇宙物理学の気鋭とされる松本親房教授が自身の研究室でメールをチェックしている。「はぁ?山下君だいじょうぶか?」
■2015年8月6日09:15:30「京都大学理学部4号館」
京都市左京区。京都大学理学部。宇宙物理学教室。井川真奈美准教授が自身の研究室でメールをチェックしている。「なにこれ?山下さん‥」
■2015年8月6日09:17:30「日本マクドナルド」
東京都新宿区西新宿。新宿アイランドタワー40階。メニュー開発本部スタッフ古谷伸吾がPCを操作しながら渋い顔をしている。「ビーフパティ:オーストラリア・ニュージーランド、チキン:タイ・中国、ポーク:アメリカ、えび:タイ、ポテト:アメリカかぁ。なんとかなるのはベーリング海のフィッシュ、それと国内産の卵だけ。バンズは日本で焼いちゃいるけど、小麦自体は輸入だし‥なによりコカ・コーラどうすんの?」
※この段階では、通信途絶が長引いた時の原材料輸入遅延を問題視していたのだった。
■2015年8月6日09:17:30「株式会社吉野家」
東京都新宿区ダヴィンチ新宿ビル2階。開発本部スタッフ佐野祥子(36)と後輩の守口哲郎(33)が休憩中。「実は私、豚丼の方が好きなのよね。仕事以外じゃ牛丼ぜんぜん食べてない」「BSE騒動で牛丼が無かった頃は学生だったなぁ」※BSEショック以上の危機が迫っていることにまだ気付いていない。
■2015年8月6日09:17:50「西岡総務相→政府専用機」
西岡総務相が専用機内の総理に極秘電話。平磯太陽観測センターが観測した太陽黒点に関する情報を連絡。「総理、1945年8月6日で間違いないそうです」
「岩国での撃墜されたパイロットは確か1921年生まれの24歳。1945年だ‥。西岡さん、私の理解を遥かに超えているよ」
■2015年8月6日09:18:40「航空自衛隊・御前崎分屯基地」
航空自衛隊・中部航空警戒管制団・第22警戒隊「御前崎分屯基地」のレーダーサイトが1機の国籍不明機が太平洋上から東京方面に向かって北上中であることを探知した。
■2015年8月6日09:18:40「航空自衛隊・入間基地」
自動警戒管制組織(バッジ・システム)が作動。入間基地防空指令所からスクランブル指令。
同じく入間基地内の中部航空方面隊・第1高射群・第4高射隊がPAC-3スタンバイ。
■2015年8月6日09:19:50「航空自衛隊・習志野分屯基地」
千葉県船橋市。中部航空方面隊・第1高射群・第1高射隊がPAC-3出動。
■2015年8月6日09:20:10「航空自衛隊・霞ヶ浦分屯基地」
茨城県土浦市。中部航空方面隊・第1高射群・第3高射隊がPAC-3出動。
■2015年8月6日09:20:10「航空自衛隊・武山分屯基地」
神奈川県横須賀市。中部航空方面隊・第1高射群・第2高射隊がPAC-3出動。
■2015年8月6日09:24:10「航空自衛隊・百里基地」
茨城県小美玉市。中部航空方面隊・第7航空団・第302飛行隊所属の部隊マーク「尾白鷲」を記したF-4EJ改がエレメント(2機編隊)でスクランブル発進。牧野直樹二尉(27)「最後の最後にご奉公する時が来たようですね。」、エレメンタル・リーダー石塚清蔵一尉(31)「負ける気がしねぇ‥笑」
■2015年8月6日09:25:00「政府専用機」
機内会議室。アメリカ大統領ビル・ジェファーソンと内閣総理大臣竹林尚樹の緊急首脳会談。外交担当の次席補佐官ジョン・マクギャリーと政務担当秘書官坪内一郎が同席。
英語が堪能な竹林・坪内コンビが「通訳抜きでやりましょう」
「現時点で得られる情報でしかありませんが、今、我が国は時空を飛び越えて1945年に存在しているようです」
「信じられない話ではありますが、在日米軍での出来事などからそれらしい状況であるのは事実のようです」
「もし今が、この日本以外が1945年8月6日だとしたら、私の他にもう一人大統領が存在するはずです。ハリー・トルーマンが‥」
「放置すれば、明々後日には長崎にB-29が飛んでくるかもしれません」
「アイゼンハワーもマッカーサーも猛反対した原爆。トルーマンは愚かです」
「我々は自滅するわけには参りません」
「当然です。何としても防ぐ必要があります。」
「日本政府としましては、第45代大統領であるあなたが統治するアメリカ合衆国を承認しており、1945年の政府はまた別物と考えます」
「まさに日米安全保障条約は運命共同体になりつつあるようです」
実はこの時、ビル・ジェファーソン大統領は、自国の全てが1945年という過去に逆戻りしたことを概ね認識していた。できれば《1945USA》と友好的に交渉し、当面の安全を保障したいと考えていた。
■2015年8月6日09:38:50「太平洋上空」
八丈島から東に65kmの上空。航空自衛隊百里基地を飛び立った中部航空方面隊・第7航空団・第302飛行隊所属のF-4EJ改2機がレーダー目標である単機のB29(第315爆撃軍団・第502爆撃群所属機)を捕捉。
牧野二尉「B29だ。本物だ。」
石塚一尉「いったい何が起こってるんだ」
■2015年8月6日09:39:00「航空自衛隊・入間基地」
入間基地防空指令所「領空侵犯機と判定された。警告開始」
■2015年8月6日09:39:10「太平洋上空」
中部航空方面隊・第7航空団・第302飛行隊所属のF-4EJ改2機。
石塚一尉「警告を開始する。Warning! Warning!! Your the violation of Japanese airspace.」
■1945年8月6日09:39:20「太平洋上空」
B29(第315爆撃軍団・第502爆撃群所属機)。
突如接近してきたF-4EJ改に機長ゴードン・スミス大尉「あれは何だ?」
通信士ボブ・コリンズ伍長「凄い。なんて強力な電波だろう」
「撃って来そうにない」
「写真撮りまくれ」
■1945年8月6日09:39:40「与党・日本亜細亜党本部」
東京都千代田区永田町。幹事長室。幹事長・鯨家磯八がテレビを見つめている。「政策、権力闘争‥。利己主義な政治屋にとっては千載一遇の大チャンスに映るだろうが、出る杭は打たれる」森本官房長官に電話。「森本君。与党日亜党は内閣が決定する事項を全て追認する。全力でやりなさい。全党を挙げて応援するから」
■2015年8月6日09:40:00「太平洋上空」
中部航空方面隊・第7航空団・第302飛行隊所属のF-4EJ改2機。
牧野二尉「聞く耳持たないようですねぇ。周波数が合わないんでしょうか」
石塚一尉「周波数を変えてみる」
■1945年8月6日09:40:20「太平洋上空」
B29(第315爆撃軍団・第502爆撃群所属機)。
通信士ボブ・コリンズ伍長「なんだ?日本の領空を侵犯していると云っています」
機長ゴードン・スミス大尉「俺達ゃそれが商売さ。放っておけ。気に喰わなかったら攻撃してくるだろう」
■2015年8月6日09:40:40「太平洋上空」
中部航空方面隊・第7航空団・第302飛行隊所属のF-4EJ改2機。
石塚一尉「応答無し」
■2015年8月6日09:41:00「航空自衛隊・入間基地」
入間基地防空指令所。「当該機。当面そのまま捕捉しつつ、無線その他によるコンタクトを継続せよ。」
■2015年8月6日09:41:20「防衛省」
統合幕僚監部。統合幕僚長・高品敬太郎海将(防大21期・前海上幕僚長)、首席法務官中村次夫一等陸佐、情報本部付分析部員・河原和夫二佐、情報本部長大田正行空将(防大25期・前統合幕僚学校長)を中心に、総務部長・運用部長・防衛計画部長・指揮通信システム部長・報道官・首席後方補給官らが一同に会している。
河原二佐「問題のB29ですが、速度500kmでこのままですと40分弱で東京上空に到達します」
現行法では撃ち落せない。
※自衛隊法・第84条‥防衛大臣は、外国の航空機が国際法規又は航空法その他の法令の規定に違反してわが国の領域の上空に侵入したときは、自衛隊の部隊に対し、これを着陸させ、又はわが国の領域の上空から退去させるため必要な措置を講じさせることができる。
「向こうから撃って来てくれれば話は変わりますが」
河原二佐「B29、無線に応答無し」
統合幕僚長・高品海将「命令。陸自の近SAM(近距離防空用地対空ミサイル)を国会周辺、皇居を含む都内要所に緊急配備」
■1945年8月6日09:42:00「衆議院議員会館北棟」
完成して2年。まだ新築の香りがする衆議院議員会館北棟10階の議員事務所に衆院議長・川西翔一郎がいる。誰かと電話中「国会には寝ていろということかね」「そうです」「与党は良いとしても野党が黙ってはいないだろう」「既に手は打っております」「戒厳令ではあるまいね」「滅相も無い。ただ、情報をコントロールさせて頂くだけです。」「しかも君には解散権があるからなぁ」
■2015年8月6日10:42:40「財務省大臣執務室。」
宮原隆一郎財務大臣(副総理)が総理官邸から一旦財務省に戻ってきた。「いやぁまさか。SF映画だよ。昔、小野田さんとか横井さんと云って何十年もジャングルに隠れていた日本兵がいたが、まるで1945年の米軍全部が70年間冷凍保存されていたような感じだよ」
■2015年8月6日09:44:00「陸上自衛隊・練馬駐屯地」
東京都練馬区。陸上自衛隊・第1師団・第1普通科連隊(連隊長松川岩音一佐)が緊急出動。
本部管理中隊=葛飾区・江東区・江戸川区・墨田区
第1中隊=千代田区・港区・品川区・中央区・大田区
第2中隊=文京区・板橋区・北区・豊島区・練馬区
第3中隊=渋谷区・世田谷区・目黒区
第4中隊=杉並区・新宿区・中野区
第5中隊=足立区・荒川区・台東区
に其々展開。
■2015年8月6日09:45:20「防衛省」
防衛記者会。朝日新聞北山伸幸記者→東京本社・編集局・政治グループデスク倉本徹に声を殺して電話。
「都内に陸自出動。第1普通科連隊です。近衛連隊ですよ」
■2015年8月6日09:46:30「警察庁警備局警備課」
警備局警備課長・向谷渉(警視長)。登庁して1時間以上。只々未整理の情報が飛び交い混乱している中で翻弄されていた。スタッフA「防衛庁から連絡。都内防空警備のため陸上自衛隊・第1師団・第1普通科連隊を緊急配備。」「俺たちに出る幕は無いのか?」
■2015年8月6日09:47:10「政府専用機」
機内会議室。アメリカ大統領ビル・ジェファーソンと内閣総理大臣竹林尚樹の緊急首脳会談。外交担当の次席補佐官ジョン・マクギャリーと政務担当秘書官坪内一郎が同席。
「大統領。そのご決断。真摯に受け止めます」
「記録に残して下さって結構です。但し、破局の場合に限ります。宜しいですね」
「当然です」
■2015年8月6日09:48:45「横田基地」
宮元信二郎防衛大臣を乗せて航空自衛隊秋田分屯基地を飛び立った救難捜索機U-125Aが到着。※羽田空港が緊急着陸機等でごった返しているため。
ジェファーソン大統領と竹林総理を乗せた政府専用機の到着を待つ。
■2015年8月6日09:49:00「航空自衛隊・入間基地」
入間基地防空指令所。「当該機。進路ならびに速度に変化無し。」単機で爆撃する気だろうか。
■2015年8月6日09:51:20「防衛省」
統合幕僚監部。B29東京到達まで30分。
「弾倉扉が開いた時点で攻撃の意思有りと判断し、防衛出動要件を満たすのではないか?」
「国会の承認が必要だが、会期中でもなし。間に合わない。大臣と内閣に予め了解をとった上で国会には事後承諾でお願いするしかなかろう」
「場合によっては大臣から防衛出動待機命令を出して頂く必要がある」
■1945年8月6日09:52:40「太平洋上空」
B29(第315爆撃軍団・第502爆撃群所属機)。
機長ゴードン・スミス大尉「まるで護衛されているようだな‥笑」
通信士ボブ・コリンズ伍長「それにしても綺麗な機体ですね。日の丸はついていますが、本当にジャップなんでしょうか。それにプロペラがついていない。ロケットかジェットなんでしょうね。」
■2015年8月6日09:53:05「横田基地」
ジェファーソン大統領と竹林総理を乗せた政府専用機(航空自衛隊・航空支援集団・特別航空輸送隊所属)が到着。
ジェファーソン大統領は、出迎えの在日米軍司令官兼5空軍司令官アルバート・ミッチャムJr空軍中将を従えて連絡ヘリ(米空軍第374空輸航空団所属UH-1N)に搭乗。麻布ヘリポート経由で駐日米大使館へ。
竹林総理は宮元防衛相を同道して連絡ヘリ(航空自衛隊航空総隊司令部所属のUH−60J※2014年から配備)に搭乗。総理大臣官邸へ。
■2015年8月6日09:53:25「総理大臣官邸地階危機管理センター」
轟官房副長官「横田に総理無事到着。10分弱でこちらにお着きになります。」
森本官房長官「やっと足並みが揃うな」
■2015年8月6日09:53:05「日本政府・連絡ヘリ」
航空自衛隊航空総隊司令部所属UH−60J。
宮元防衛相「現在東京に接近中のB29ですが」
竹林総理「状況が状況ですからね。現場の判断で宜しいでしょう。責任は私が負います。」
宮元防衛相「では私は防衛出動待機命令を統合幕僚監部に命じます」
■2015年8月6日09:53:15「2015米政府・連絡ヘリ」
米空軍第374空輸航空団所属UH-1N。
アルバート・ミッチャムJr空軍中将「我々の最高指揮官は第45代大統領ジェファーソン閣下であることを改めて申し上げます」
ジェファーソン大統領「祖国の歴史と袂を分かつことになるかもしれない」
「こちらのデータをご覧下さい」※モニタに表示させる。
「ニミッツ、マッカーサー‥いずれにしても望まない選択肢だ」
■2015年8月6日09:54:30「フジテレビ報道センター」
丸野アナ「茨城県ひたちなか市の情報通信研究機構・平磯太陽観測センター。冬月誠センター長とテレビ電話が繋がりました」
太陽に黒点というホクロのようなものが現れることは皆さんもよくご存知の通りです。その黒点がいつ頃、太陽のどの位置にどのくらいの大きさで現れているか、これを観察し続けております。
本日午前8時に撮影された写真をご覧下さい。そしてこちらが1時間ほど前ですね午前9時に撮影した写真です。
「全然違いますね。1時間で突然変化することはあるのですか」
絶対に無いと断言できます。太陽の自転周期は凡そ25日です。赤道付近ですと27日6時間36分。極の近くでは31日19時間12分。このスピードでゆっくり変化するのが普通です。
「では何が起こっていると。現在の大規模通信トラブルと何か関係があるのでしょうか?」
こちらをご覧下さい。現在の黒点位置と極めて似ている写真です。これはアメリカのスミソニアン天体物理観測所が撮影した写真です。それともう一つ、こちらはスケッチなんですが、日本の国立天文台のデータベースにあるものです。日付は1945年8月6日午後1時20分とあります。先程のスミソニアンの写真ですが、こちらも1945年8月6日に撮影されたものです。
少なくとも云えることは、太陽は1945年8月6日の状態になってしまったということです。
冨永報道局長「冬月先生をスタジオにお連れしろ。うちで囲ってしまうんだ。車?バカ!ヘリを出せヘリを!」
■2015年8月6日09:56:00「KDDI二宮海底線中継所」
神奈川県二宮。アメリカと日本とを結ぶ「第6太平洋横断ケーブルネットワーク(TPC- 6CN)」が太平洋約1000kmの海底で断線。他の海外向けケーブルも全て同様。早期の復旧は不可能であることを最終確認。
技術者「KDDI宮崎海底線中継所さん、そちらは?」駄目〜!
■2015年8月6日09:58:05「ラ・トゥール汐留49階」
44階までは公団住宅アクティ汐留。45〜56階は、超高給マンションラ・トゥール汐留。2LDK家賃83万円に住む元ITベンチャー経営者・野上麻里江(32)。現在は執筆活動と並行して評論家活動を行う。アルファブロガーとしても知られている。
テレビを眺めつつ「つまり1945年にタイムスリップしてるってこと?ふざけんじゃないわよ」
■2015年8月6日09:59:20「三宅島沖」
三宅島から東に50kmの上空。航空自衛隊百里基地を飛び立った中部航空方面隊・第7航空団・第302飛行隊所属のF-4EJ改2機がレーダー目標である単機のB29(第315爆撃軍団・第502爆撃群所属機)を捕捉中。
牧野二尉「三宅島です。第315爆撃軍団さん、やはり東京を爆撃するつもりでしょうか?」
石塚一尉「データだけ見れば、AN/APQ-7イーグルレーダー装備の高機能部隊とある。昼間は精密爆撃を得意としているようだ。しかし、1945年8月6日に東京は空襲にあっていない」
牧野二尉「途中で偏進するかもしれません」
石塚一尉「グアムから飛んで来たことになっているから、燃料が‥どうかな」
■2015年8月6日10:00:00「Web」
海外サーバ、海外データセンターを介したサイトは全滅だが、国内サーバを使用したサイトは大賑わいとなっていた。一部のSNSや画像掲示板、ブログなどで太平洋沿岸で散見されるレトロな軍用機の遠望写真が市民のパニックの火種となりつつあった。
■2015年8月6日10:01:30「慶応大学矢上キャンパス22棟」
神奈川県横浜市。慶応大学理工学部物理学科。宇宙物理学の気鋭とされる松本親房教授の研究室。「目を疑うとはまさにこのことなんだが‥」
そこに神奈川県警・警備部・警備課の和田幸成警部補が訪れる。「内閣府からの信書を持参しました」
信書には、今すぐ来いと書いてある。「はい、私がパトカーでお送りすることになっております。お急ぎ下さい」
■2015年8月6日10:03:00「京都大学理学部4号館」
京都市左京区。京都大学理学部。宇宙物理学教室。井川真奈美准教授の研究室。「なにこれ?山下さん‥」
そこに京都府警・警備部・警備第一課の石毛克彦警部補が訪れる。「内閣府からの信書を持参しました」いくら何でも間に合いませんよ。「先生にはこちらから緊急回線でご参加頂きます」そこへNTT西日本京都支店の技術スタッフ4名がドカドカと入り、あっと云う間にTV会議システムを構築していく。
「わたし、午後から夏休み天文スクールに出ることになっているんですが」「実は‥私の息子も楽しみにしていたんですが、どうやら世の中はそれどころじゃないようです」
■2015年8月6日10:03:20「財務省」
大臣執務室。宮原隆一郎財務大臣(副総理)が総理官邸の森本啓造内閣官房長官と電話中。「で、どうなんだい。本当に1945年に舞い戻ってしまったのかい。」傍受している海外の短波放送そのほか、全てがそれを裏付けています。
「日本だけなのかい」少なくとも、アジアならびに太平洋周辺ではそのようです。
「韓国や北朝鮮は」政府が存在していません。
「森本くん、不思議な気分だよ。驚いてはいるんだが、なんだろうねこのウキウキした気分は‥」大臣そろそろ閣議です。官邸へお越し下さい。「わかった」
■2015年8月6日10:04:30「テレビ朝日」
報道特番の主題は、1945年にタイムスリップした日本に変わっている。早稲田大学政治経済学部・政治学科・国際政治学者として著名な小野寺紘一教授がゲストとして招かれ、窪塚恭子キャスター、大沢拓解説委員の3人で番組が進行している。
小野寺「まず全ての経済活動が一旦統制されると思います。外資や外貨もあって無きが如し。」パニックが心配されます。大企業や資産家は大ダメージを受けますが、実際どうでしょう、市民生活自体への影響はしばらく猶予期間がありそうな気がしています」
■2015年8月6日10:05:20「福岡証券取引所」
普段なら前場が9時にスタートするのだが、三大取引所と云われる「東京証券取引所」「大阪証券取引所」「名古屋証券取引所」が通信途絶を受けて全銘柄取引停止措置をとっていた。
結局、地方取引所「福岡証券取引所」「札幌証券取引所」が取引が成立せず全銘柄取引停止措置。
新興取引所「ジャスダック証券取引所」「TOKYO AIM取引所」、証券6市場「マザーズ」「ヘラクレス」「セントレックス」「Q-Board」「アンビシャス」「NEO」全てが全銘柄取引停止措置という異常事態である。
当然、外国為替も全面取引停止状態である。
■2015年8月6日10:06:00「タワーレコード渋谷店3F」
洋楽コーナー。藤本由美(津田塾大学国際関係学科2年)、伊田絵梨香(津田塾大学国際関係学科2年)
「CDもDVDも外国のは入らなくなっちゃうね」「それ、困るー」
■2015年8月6日10:06:00「マクドナルド西新中央商店街店」
福岡市早良区。中村健太(商学部経営学科1年)、松下博美(文学部英文学科1年)
「ハンバーガーもコーラもあるんじゃない?1945年でも‥」
■2015年8月6日10:07:00「焼津港」
瀬戸口満里(主婦)が海を見つめている。「父ちゃん、もう帰ってこれないのかな」
※多くの遠洋漁業船が消息不明であった。
■2015年8月6日10:08:00「麻布ヘリポート」
ジェファーソン大統領らを乗せた連絡ヘリが到着。大使館公用車で駐日米大使館へ。
■2015年8月6日10:08:45「総理大臣官邸屋上へリポート」
竹林総理は宮元防衛相を乗せた連絡ヘリが到着。水沢防衛副大臣が出迎える。「事態は極めて深刻」
閣議室に集まってるね。「はい。宮内庁長官もお呼びしました」よろしい。
■2015年8月6日10:09:20「大使館公用車」
ジェファーソン大統領らを乗せた大使館公用車で駐日米大使館へ。
「核のフットボール」を携えたグレン・アンダーソン海兵隊中佐に大統領が声をかける。衛星も駄目であらゆる通信が不能。そのカバンの中身も今は機能しないだろう。どうする?
「これを機能させないことが大統領の仕事です。私はそれをお守りするだけです」
■2015年8月6日10:10:00「中田神社」
仙台市太白区西中田。JR南仙台駅近くの神社。近くに住む樫村良造(64)由美子(58)夫妻が祈っている。ツアーコンダクターとしてサイパンに出掛けている一人娘・奈津美(29)の身を案じてのこと。
※サイパンを日本時間午前6時に発つノース・ウエスト099便(成田行)に乗っているはずだった。
■2015年8月6日10:11:30「三井物産本店」
東京都千代田区大手町。海外拠点との通信途絶、政府関係者からの有力情報等により、設立以来の危機に瀕していることを認識していた。海外からの資源・エネルギー輸入をどうすべきか?主要幹部職員を非常呼集。各事業部ごとの状況判断を急ピッチで進めていた。
■2015年8月6日10:11:45「総理大臣官邸5階。総理執務室」
竹林総理が日亜党・鯨家幹事長に電話。「まさか宴会の馬鹿話が現実になるとはね‥」「竹さん、腹くくったね」「磯さん、国会には3日ほど眠って頂きますが、宜しいですね」「目が覚めた後、うまくいけば我々は英雄。失敗したら」「覚悟はできています」
■2015年8月6日10:13:50「大阪・新世界・大衆食堂あづま」
無類の映画好きの老人、通称「淀川長く生きてはる翁(78)」がハムエッグを突付きながら瓶ビールをやっつけている。飲み友達・ベンさん(63)が云う「そやけど淀川先生。1945年でっせ。ワシ昭和27年生まれですわ。1945年って昭和20年ですやん、生まれませんわ」「ベンちゃん、驚くことは無い。ワシは8歳やったから少しは覚えとるけど、なーんもこの辺が昭和20年になったわけで無し。闇市もあらへん。朝からこうやってビールも飲める。大丈夫や。それにな、ハリウッド映画の黄金時代をもういっぺんこの目で見られるかもしれん。もう楽しみでたまらんわい」
■2015年8月6日10:15:10「熊本市・大江小学校」
夏休み中なので町内ごとにプールの時間が決まっている。そこへやってきた後藤文夫(小2)「えー!今日プール休みねぇ。こぎゃん天気が良かとにぃ」
学校の当番教諭「ふみくん、テレビ観とらんと?お母さんは?仕事ね。とにかく今日は家でじっとしときなっせ」
■2015年8月6日10:16:30「岡山市・ジュンテンドー原尾島店」
岡山県岡山市中区。ホームセンター。平常通り午前9時開店。小川幹雄店長「お客様の入りはいつもと変わらんなぁ。台風の後ならビニールシート。タイムスリップで何が売れる?‥わからん」
■2015年8月6日10:17:15「総理大臣官邸閣議室」
竹林総理「我々が一度も経験したことが無い自体です。これから速やかに国としての方針を決定し、それを迅速に実行しなければなりません。」
宮原財相「国会はどうするつもりです?」
西岡総務相「招集している時間がありません。」
森本官房長官「外遊中の衆参議員12名は依然消息不明です」
・大統領が主導して在日米軍が1945米軍ならびに1945米政府に交渉する。
・通じない場合は、在日米軍全体を日本国と運命共同体とし、ビル・ジェファーソン大統領を連合軍担当特命大臣に任命する。
宮原財相「おいおい。アメリカ大統領を日本の国務大臣に?」
竹林総理「大統領は本気です」
宮元防衛相「在日米軍の指揮権はどうなります?」
竹林総理「私が最高指揮権を持つ」
三ヶ尻経産相「総理と大統領はどんなビジョンをお持ちですか?」
第一に和平。我々は戦争をするつもりはない。
しかし、相手が納まらなければ自国民を守らねばならん。しかも極めて短期間に危機の芽を摘み取らねばならない。
和平が達せられなければ、軍事力を行使する。
日本国の新たな秩序を作り、世界のリーダーにならなければならない。
(簡潔かつ重厚な説明が終わる)
宮原財相「竹林・ジェファーソンドクトリンか‥」
西岡総務相「戦後、放置してきた歴史の再構築というわけですね」
竹林総理「それしか日本が生き残る道はない」
宮元防衛相「しかしそれをたったの3日間で‥」
竹林総理「長崎にB29が飛んでくる。そしてソ連もだ」
(とりあえずここまで‥※ここから先、目が離せない展開に!w)